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監督:ベント・ハーメル
出演:ヨアキム・カルメイヤー、トーマス・ノールストローム
[公式サイト]
5月22日より、Bunkamura ル・シネマにてロードショー |
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| 1950年代初頭。スウェーデンで『独身男性の台所行動パターン調査』が始まり、調査員のフォルケはノルウェーの田舎町にやってきた。しかし、調査対象の老人イザックは台所を使おうとしない。一方、調査員は調査される男性と交流してはならない規則のため、フォルケは黙ってイザックを観察する。気まずい日々が過ぎたある日、フォルケとイザックはふとしたきっかけで会話を始めた。次第に心を通わせていく2人だが、やがて、規則違反がフォルケの上司に知られてしまう…。
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正直言って、スウェーデンとノルウェーの違いなどそう考えたことはなかった。スウェーデンにはボルボとイケアとパルプ産業があって、ノルウェーは肩身の狭い捕鯨国仲間でサバの輸入先ということくらいしか知らない。けれどこの映画を見ると、北欧の“兄弟国”の微妙な関係と、そこから柔らかな笑いを生み出すユーモアセンスが、ほんのちょっとわかったような気がする。そして何より、オヤジたちの友情と、その結果のスローライフの豊かさに共感しないではいられない。
時は1950年代。工業化を推し進めるスウェーデンでは、家庭研究所が台所の行動調査を始め、ノルウェーに住む独身男性にまでその範囲を広げていた。“動線”を調べて製品開発に役立てようというのだ。やがて、形ばかりの国境を越え、調査員たちがトレーラーつきの車で列をなしてやってくる。田舎町に愛馬とともに住んでいる老人イザックは、“馬”がもらえると聞いて調査に応じたのに、この馬が木彫りの民芸品だと知って機嫌が悪い。しかも、台所の監視台にすわっている調査員フォルケとは言葉を交わすことが禁じられている。
漂う沈黙と気まずい空気。見下ろすスウェーデン人と監視されるノルウェー人。この“上下関係”は単に象徴的な構図にすぎないとしても、スウェーデンの同君連合下から独立を果たしたノルウェーの歴史を背景に、資源も富も豊かなスウェーデンと海しかないノルウェーの屈折した兄弟喧嘩のようなやりとりが登場人物の会話からもれてきて実に興味深い。
やがてイザックとフォルケは、食という根源的な欲求に関わる小道具(塩、コーヒー、塩漬けニシン、ソーセージ、チーズ、バースデーケーキ)を介して友情を育んでいく。頑固な老人と真面目な中年男が心を通わせる過程には、自然とともに生きる素朴な暮らしが垣間見える。効率一辺倒の社会、規律第一の企業に較べ、この暮らしの何と豊かなこと……。やがてフォルケはそれに気づき、自分の意思を貫く勇気を身につけるのだ。
こう書いてくると、スローライフの流行に乗っかった作品のようだが、この映画の美しさはそれを大声で礼賛するのではなく“自然のままでいいじゃない”とつぶやくような慎み深さ。社会や体制にいきがって反抗するのではなく、ただ自分の生き方をみつけて実践するという上品さ。それが、しみじみと心にしみるゆえんでもある。 |
| 執筆:稲垣 都々世 |
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