ホーム > 作品情報 > デス・プルーフ in グラインドハウス
●ジャンル:アクション
●上映時間:113分・R-15
●配給:2007米/ブロードメディア・スタジオ
●スタッフ&キャスト: [監督][製作][脚本][撮影][出演]クエンティン・タランティーノ
[出演]カート・ラッセル ゾーイ・ベル ロザリオ・ドーソン バネッサ・フェルリト ジョーダン・ラッド
[c]2007 The Weinstein Company
鬼才クエンティン・タランティーノ監督が、少年時代に幾度となく観たB級映画の魅力を再現したアクション。コワモテの殺人鬼と女性スタントマンが、車を操り派手なバトルを展開。
ドクロマーク付きのシボレーに乗る、中年スタントマンのマイク。彼はテキサスのバーに居合わせた客らを車で襲った。1年後、テネシーで新たな標的を見つけた彼だが、相手のスタントウーマン一行の猛反撃を受ける。

クエンティン・タランティーノ監督は、あらゆるジャンルの映画を観尽くしてきた映画オタクとして有名だ。そんな彼を育てたのは、彼がアルバイトをしていたレンタルビデオ屋と、本作のタイトルの一部となっているグラインドハウスだ。では、グラインドハウスとはいったい何なのか。これは60年代、70年代にアメリカに点在し、低予算で内容も極端なB級作品が2本立てや3本立てで上映していた映画館の総称だ。
そんなグラインドハウスの洗礼を幼少期から受けてきたタランティーノが、盟友ロバート・ロドリゲス監督と立ち上げた企画が、同名の“グラインドハウス”だ。この企画は、シネコン全盛の現代に当時のグラインドハウスを甦らせようと、2本立てのB級映画を立て続けに上映するもの。ロバート・ロドリゲスが撮ったのが、『プラネット・テラー』という名のゾンビ映画。そして、クエンティン・タランティーノが撮ったのが『デス・プルーフ』というガールズ・スラッシャー映画だ。
本作は、“デス・プルーフ”つまり“耐死仕様”の改造シボレーに乗る変態スタントマンが、かわいい女性たちをつけまわし、クルマごと激突して殺戮する、まさに当時のグラインドハウスでかかっていそうなスラッシャー(スプラッター)系B級作品。それに、カーチェイス映画、ガールズ・ムービーの要素も加えて、タランティーノらしい絶妙のアレンジが施されている。
オマージュうんぬんはいつものこととして、特筆すべきは、前半と後半の展開切り替えの激しさだろう。前半の、無意味な女子トークを散りばめ、だらりとさせた倦怠感と、後半の、近年のタランティーノ作品随一の爽快感のギャップは強烈。物語の変化の意味では、ロバート・ロドリゲスが監督、クエンティン・タランティーノが脚本を担当した名作『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を思わせる。ある意味、間延びした前半をどのように捉えるかで本作の評価は変わってくるのだろうが、僕個人はギャップを生む布石として好意的に捉えている。
なお、本作では『キル・ビル』シリーズでユマ・サーマンのスタントダブルを担当したゾーイ・ベルが、本人そのままの名前、職業で、主役としてカーチェイスのアクションにCGなどを使わず挑戦している。このあたりも映画の隅から隅までを愛するタランティーノらしいキャスティングと言えるし、本作で最もおいしい役、猟奇スタントマンを演じたカート・ラッセルの変態っぷりもハマっていて最高に楽しい。
ちなみに僕が本作で一番評価したのは、タランティーノが空気を読める点。確かに、“グラインドハウス”という企画の前提として、当時の空気、当時の体裁を押し出しているが、それでいて、現代のオーディエンスが楽しめるように、娯楽性の噛み砕くべきは、きっちり噛み砕いている。それにより、映画好きじゃなくても意外と受け入れられる爽快な作品へと進化させることに成功した。結果、本作は史上最凶のガールズ・ムービーに仕上がっている。ストレスの溜まった女子には是非観てもらいたい逸品だ。

