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予告編
●ジャンル:人間ドラマ
●上映時間:143分
●配給:2006東宝
●スタッフ&キャスト: [監督][脚本]周防正行
[製作]亀山千広
[撮影]栢野直樹
[音楽]周防義和
[出演]加瀬亮 瀬戸朝香 山本耕史 もたいまさこ 役所広司 田中哲司 光石研 尾美としのり 田口浩正 清水美砂 竹中直人
[c]2006 フジテレビジョン アルタミラピクチャーズ 東宝
「Shall we ダンス?」から11年、周防正行監督の最新作が登場。痴漢に間違われた青年に加瀬亮、新米弁護士に瀬戸朝香を配し、冤罪裁判の不条理を描く社会派ムービーだ。
会社の面接に向かう金子徹平は、満員電車で痴漢と間違われ逮捕された。取調べで無実を主張した彼だが、ついに起訴され裁判が始まる。しかし、新米弁護士の須藤莉子は、被害者と同じ女性として徹平の弁護を嫌がる。

満員電車に乗るとき、僕は両手をできるだけ高めの位置に持ってくる。理由は、絶対に痴漢と間違われたくないからだ。実際に間違えられたことは一度もないけれど、これからも満員電車に乗る以上、間違えられる可能性が0であるとは言い難い。しかし、もし、間違えられたらどうなるのだろう。そして、もし、万が一、有罪になってしまったらどうなるのだろう。おそらくは、全ての職を失い、全ての社会的信用も失い、これから一生、痴漢をした人というレッテルを貼られていくのだろう。考えただけでも恐ろしい。通勤通学している男性は、そんなギリギリのシチュエーションとほぼ毎日直面しているのだ。そんな誤解という不幸が訪れたとき、無実の身でも有罪になる可能性を、恐ろしいまでに認識させてくれた映画が『それでもボクはやってない』だ。
『シコふんじゃった。』では相撲を、『Shall we ダンス?』では社交ダンスを取り上げた、あの周防正行監督が11年ぶりに撮った映画の題材は、裁判。前述した、痴漢冤罪をモチーフに日本の刑事裁判制度の現実を明らかにし、鋭い語り口でバッサリと斬っている。
満員電車で痴漢に間違えられ、現行犯逮捕された加瀬亮演じる青年が、役所広司、瀬戸朝香演じる弁護士と共に裁判で身の潔白を証明しようとするものの、脅迫に近い示談交渉、書き換えられる証言、でっちあげの取調べなど、日本の刑事裁判の現状が抱えるいくつもの問題が、彼らの行く手を阻む様を描いている。
驚かされるのが、周防監督の緻密な取材に基づいた実際の痴漢冤罪裁判の実情。特に本作で描かれている、無実であろうがなかろうが、そんなものは無関係といわんばかりに、ひとつの事件をひとつの案件として、強引に“処理”しようとする警察および検察側のスタンスは、それが全てではないにせよ、大きなショックを与える。検察側にしてみれば、ひとつの事件も、対応すべき“仕事”のひとつかもしれないが、被疑者側にとってみれば、そんなことで人生を決められたらたまったものではない。また、あまりに人依存な裁判にも少なからず衝撃を受ける。裁判官のスタンスひとつで、白もグレーとなり、あっという間に黒に染まってしまう。我々が当然フェアであると信じていた公権力、特に裁判というフィールドのどす黒さに戦慄する。
そんな恐ろしい実情を浮き彫りにしている本作は、強烈な社会派作品であると同時に、周防正行監督らしい、目が離せないエンターテイメント作品でもある。ただ、この作品のエンターテイメント性は、観客を楽しませる目的というよりも、この社会問題にできるだけ多くの人の目を向けさせるための手段であり、それは間違いなく機能するだろう。
新年早々、多少は気分が重いかもしれないが、頭と身の引き締まる映画からスタートするのもいいのではないだろうか。少なくとも、毎日、満員電車に揺られているボクは強くオススメする。

