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『硫黄島からの手紙』

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作品情報

●ジャンル:人間ドラマ

●上映時間:141分

●配給:2006米/ワーナー

●監督: [監督]クリント・イーストウッド
[製作]スティーブン・スピルバーグ
[出演]渡辺謙 二宮和也 中村獅童 伊原剛志 加瀬亮

●製作:クリント・イーストウッド  

●出演:渡辺謙 二宮和也 中村獅童

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[c]2006 Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks L.L.C.  

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「硫黄島」2部作第2弾日本から見た硫黄島

5日で終わるとされた戦いを36日間戦い抜いた男たち

2度のアカデミー賞監督賞を受賞したクリント・イーストウッドが、スピルバーグを製作に迎えた戦争映画。太平洋戦争の激戦地・硫黄島の戦いを日本軍側の視点から描いている。

太平洋戦争の末期、戦況が悪化した硫黄島では日米軍の戦闘が開始されようとしていた。その頃、島に新しい指揮官、栗林忠道が降り立った。戦死が名誉とされていた中、彼は兵士たちに生きて国に帰ることを命じる。



〈硫黄島2部作〉の第2弾。英雄に祭り上げられた米兵の悲哀の中に戦争の虚しさを描いた前作に対し、ここでは日本兵が家族に送った手紙の中に彼らの心情を探り、戦争には勝者も敗者もないという真実を語る。

イーストウッドは一つの戦争を両者の側から描くという前代未聞の試みについて次のように語る。「リサーチするうちに日本側の歴史に興味がわいた。(指揮官の)栗林中将は傑出した頭脳を持ち、ハーバードで学んだ知識から、アメリカと戦うなどもってのほかと進言した人物。この物語を是非映画で描きたくなった。戦争には常に敵味方がいるが、それぞれの物語を見せて初めてかなり平等な事実が描ける」――。前作では顔の見えない不気味な存在だった日本兵が掩蔽壕から出て、映画の中で生きた人間として呼吸し始める。

硫黄島の日本兵は大きく3者に分類できる。アメリカ留学経験のある栗林中将や、ロスのオリンピックで馬術の金メダルを獲ったバロン西ら、親米的な知識人。いやおうなく戦地に駆り出された若い兵士たち。栗林に反発する古参将校たち。イーストウッドは日本人が見てもユニークな栗林中将にスポットを当てることで、ステレオタイプの日本兵とは違う“人間”に深くコミットしていく。それによって、硫黄島の戦いとは何だったのかを浮き彫りにする。

米兵は生還するために戦ったが、日本兵は「生きて帰れると思うな」と怒鳴られながら戦った。退却して生き延びるより、誇りある軍人として潔く自決すべしと教えられた。イーストウッドが「理解するのが難しい」と語る日本人のメンタリティー。「最後まで生き残って祖国や愛する者たちのために1日でも長く島を守れ」と部下に命じる栗林中将が、異端者だったという事実。アメリカと日本の社会体制、史観、死生観には大きな違いがある。前作と違い、この映画はほとんど硫黄島の戦場だけを舞台にしているが、戦いの意味も戦う兵士の心理も前作の米兵士よりずっと複雑だ。このような“違い”が、この2部作を優れて特異なものにしている。

一つの戦争を敵と見方の双方から合わせ鏡のように描き分けるのでなく、それぞれに見合う違った構成を考える。より深くメンタリティーの違いにまで踏み込み、“違い”を認識した上で、同じ人間としての気持ちをみつける。それは、人と世界を俯瞰できる者だけに可能な成熟した知性のたまものだ。

執筆:稲垣都々世



何度涙したか分からない。数多くの戦争映画や人間ドラマを見てきたが、これほど心を打つストーリーはなかった。軍人である前に、夫であり父親である彼らの戦地での思い、家族への思いが手紙を通してストレートに訴えられているからこそ、深く胸に突き刺さる。アメリカ人のイーストウッドが描く日本軍の姿は、彼らに畏敬の念を抱きながらも変に美化されることなく、命の平等さ、戦争のむなしさを訴えている。イーストウッドの映画づくりの視点や手腕に改めて感服させられる。

5日で終わると言われていたアメリカ軍による硫黄島の攻落を36日間という長期戦にもちこみ、敵軍に大きなダメージを与えた日本軍。それを指揮したのが、国際感覚をもち、創造性豊かで、愛すべき父親でもあった栗林忠道中将だった。栗林中将を中心に、硫黄島中に地下トンネルを作る防衛準備から、すさまじい激戦、悲劇的な最期を描いている。イーストウッドは、栗林が書いた家族への愛情に溢れた手紙から、映画のインスピレーションを得たというが、その高潔な人柄は、私たちに日本人であることを誇りに思わせる素晴らしさ。2万人の兵士を率い、アメリカ軍に最も恐れられたという男でありながら、温厚で兵士への思いやりに溢れた紳士的な総指揮官・栗林。会戦が迫り来る中、硫黄島の地下で、穏やかな表情で幼い子供や妻に手紙をつづっている姿が印象的だ。

太平洋上で最も熾烈な戦いと言われた硫黄島の戦闘シーンの迫力は、アメリカ側の視点で描いた『父親たちの星条旗』にはなかった激しさ。ゾッとするほどの大量の艦隊が硫黄島に押し寄せ、空からは激しい爆撃が繰り広げられる。そんな戦況をじっと耐え、進攻してくるアメリカ軍をギリギリまで引き付けて地下から一斉に反撃に出るよう指示する栗林。武器、兵士の数ともにアメリカに劣る日本軍が上陸戦で優位に立ち、栗林の知恵と兵士たちの勇気に興奮は高まる。しかし、栗林の斬新な戦法や考え方に反発する者もいて、開戦後も組織がまとまらず、歴史的な戦いの裏で栗林は味方にも追い込まれていたことを知る。

オスカーに輝くイーストウッド監督作に、日本の俳優が出演しているのも話題のひとつだが、そのキャスティングがまた見事! 栗林を演じる渡辺謙は、誇り高き日本軍人を期待以上の存在感ある演技で見る者を魅了する。無駄な体罰を止めさせ、部下と信頼関係を築き、アメリカ軍の攻撃が始まるや、厳しい指揮官として的確な指示を与えていく。兵士たちが神経質になっている硫黄島において、ひとり穏やかな口調でユーモアも交えて話す栗林中将の人間の大きさ、温かさに一瞬の安らぎを感じることができる。そして、謙さんばかりに期待していた中で、役者としての素質をイーストウッドに引き出され、強烈な印象を残すのが一兵卒の西郷役の二宮和也だ。兵士たちが愛国心を叫び、戦争に血気づく中で、マイペースで冷静に状況を見守る若き兵士を好演。その態度から不真面目な兵士とみなされるが、祖国に残した身ごもる妻を心配するからこそ戦争を無意味と考え、敵軍に追い詰められ自決していく仲間たちの姿に衝撃を受けながらも何が何でも生き抜く決意をする。皆、好きで国のために命を散らすのではない。死の恐怖に誰もが怯え、自分の命を守るために、同じく家族や愛する人をもつ敵を殺していく。アメリカ人も日本人も同じ人間であり、置かれた立場や気持ちは一緒。“お国のため”を拒絶しつづけ、生きて帰ることに執着した西郷は非国民とされるだろうが、実はこの西郷の気持ちこそ、戦地での若者の素直な思いであったのではないだろうか。しかし、それが許されない時代に生まれた彼らを待つ運命が辛い。結局、死闘もむなしく硫黄島はアメリカに占拠され、東京大空襲など本国への攻撃の基地に使われてしまうのだから。

祖国の愛する家族を守るため、36日間戦い続けた男たち。手紙をしたためる者、アメリカの若い兵士をそっと看取る者、死への恐怖から白旗をあげる者、自決を美徳とする者…。そんな彼らの素顔を知ることで、硫黄島に散っていった兵士たちの無念さが胸を締め付ける。

執筆:SAVU

 

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