地下鉄から、東京オリンピックに沸く昭和39年に紛れ込んだ営業マンの真次。彼の話を誰もが聞き流す中、恋人のみち子だけは信じてくれた。そんなある日、彼は彼女と共に戦後の闇市が広がる昭和21年に紛れ込んでしまう。


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本編冒頭映像 10月9日-10月23日 配信は終了しました ![]() |
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大沢たかおインタビュー 小沼佐吉を好演した大沢たかおに直撃! ![]() |
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予告編
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●ジャンル:人間ドラマ
●上映時間:121分
●配給:2006ギャガ=松竹
●監督: [監督]篠原哲雄
[原作]浅田次郎
[製作]宇野康秀ほか
[脚本]石黒尚美
[音楽]小林武史
[撮影]上野彰吾
[美術]金田克美
[出演]堤真一 岡本綾 常盤貴子 大沢たかお 田中泯 吉行和子
●製作:篠原哲雄
●出演:堤真一 岡本綾 大沢たかお
浅田次郎の原作を映画化した、ファンタジックな人間ドラマ。タイムスリップにより様々な時代に迷い込む主人公に堤真一。彼の父親を大沢たかおが演じている。
地下鉄から、東京オリンピックに沸く昭和39年に紛れ込んだ営業マンの真次。彼の話を誰もが聞き流す中、恋人のみち子だけは信じてくれた。そんなある日、彼は彼女と共に戦後の闇市が広がる昭和21年に紛れ込んでしまう。



第16回吉川英治文学新人賞に輝いた浅田次郎の代表作が堤真一、大沢たかお、常盤貴子、岡本綾という豪華キャストによって映画化された。主人公は下着メーカーのセールスマン、真次。ある日彼のところに、過去の確執から高校卒業以来会っていない父親・佐吉が倒れたという知らせを受ける。それでも真次は父に会おうとはしなかった。そんな時、彼は地下鉄のホームで死んだはずの兄を見かけて後を追う。追っていった先の出口を出ると、そこは昭和39年の世界だった。しかもそれは、兄が交通事故にあって死んだ日。もしかしたら兄の死を止められるかもしれないと思った真次は、必死に彼の姿を探すのだが?
このエピソードを導入に真次は様々な過去の時代へとタイムスリップし、自分が知らなかった父親・佐吉の若き日の姿を垣間見ていく。ここでは断絶していた親子の歩み寄りを縦軸に、堤真一演じる真次と彼と愛人関係にある岡本綾扮するみち子。若き日の佐吉役の大沢たかおと、やはり彼の愛人・お時に扮した常盤貴子という二組のカップルの愛を横軸に、ドラマが展開する。

中でも魅せるのは真次と佐吉との親子の関係性だ。実際の真次には、母や子供たちに暴力的で冷たく当たる父親像しかない。だが太平洋戦争中に出征するときに将来の夢を語る純真な青年・佐吉や、戦地の満州で子供たちを守るために自分の身を犠牲にしようとする佐吉、戦後の闇市で周りから兄貴分と慕われながら危険な商売に手を出している佐吉など、父親の様々な顔を知っていくうちに、彼が内面に抱えた家族への思いを知っていく。その時代ごとに違った雰囲気を持つ佐吉のキャラクターを、大沢たかおは全体としてうまくひとつにまとめ上げている。真次を演じた堤真一も、時には自分より年下の男として登場する佐吉に友情のようなものを感じながら、絆を深めていく男を情感豊かに演じている。特にみち子やお時も交えてメインの4人が揃うクライマックス・シーンでは、それぞれの俳優の演技が濃密に絡み合い、大きな見せ場になっている。
監督の篠原哲雄は全編に人間の絆を滲ませながらも、テンポよく様々な時代が交錯する人間ドラマをさばいた。ただ親子のドラマと二組のラブストーリーでは、親子のドラマが印象として勝っていて、男女の愛をいささか語り足りえていないのが残念だ。それでも4人のスターの共演や昭和の時代を再現した映像など、見どころは多い1本である。

執筆:金澤 誠


篠原哲雄監督は『草の上の仕事』『月とキャベツ』『洗濯機は俺にまかせろ』『はつ恋』『命』『欲望』など、実に様々なタイプの作品を撮ってきた。特定の“色”がなく、内容しだいで脚本にそった演出をする人だ。だから今回は、〈浅田次郎の映画〉になった。
浅田次郎はストーリー・テラーとして知られている。日本人の琴線のありかをよく理解して、泣かせるのがうまい。感動をお約束してくれる。この映画もそうだ。男女の愛、父と息子の反目と和解という誰でも覚えのある感情を、いかにも日本的な時代を背景にすることで琴線をくすぐりながら、めくるめくストーリーの中で感動へと昇華させようとする。
めくるめくストーリーの扉は、タイム・スリップというファンタジックな仕掛けで開かれる。なぜそんなことが起こったのか定かでないが、境界は真っ暗な地下鉄のトンネルと、わかりやすい設定だ。初めてタイム・スリップしたのは昭和39年、東京オリンピックの年。しかもその日は、主人公・真次の兄が事故で死んだ日だ。真次は当然のごとく、兄の死を回避しようとする。この冒頭のシークエンスで、タイム・スリップの驚きと、父が兄を死に追いやったと信じている真次の心情を端的に説明して、つかみは十分だ。
そして、ここからが本題だ。次にトリップしたのは昭和21年。戦後の混沌とした時代の、それを象徴するような場所・闇市である。ここで真次は父と出会い、その本性を知り、自分との共通点に気づかされる。

確かに、父親は一本気で男気がある。愛人への愛は純粋だ。真次の父親への憎悪が一本気な性格から生まれたもので、妻子がいながら若い女と不倫関係にあることをもって、父と息子の類似といえなくはない。だから、ここで見たエピソードで、愛の本質と切なさを知り、父親と息子の血の絆を感じ取れる人がいるかもしれない。そんなあなたには、自分の心の中で物語を膨らませることができる作家の才能がある。
そんな才能がないと、原作で綿々と綴られている感情をこの映画の中に見つけることは容易ではない。ここには行間のエモーションがない。俳優たちがくっきりした説明的な演技と台詞で心情を語っても、葛藤は薄い。物語が感動すべきものであっても、感情を共有することは難しい。色を持たない監督は、強烈な色で塗り固められた原作と出会い、自分の色を見つける前に染まってしまったようだ。

執筆:稲垣都々世